✅ 本サイトは、牡蠣を起点として、環境・文化・人間の関係を記録しています。
✅ 筆者は、接客業、ゲーム制作、食文化、環境デザインの現場を通じて、人と環境の相互作用を観察してきました。
✅ 本稿は、資料的記述だけでは捉えきれない感覚や構造を伝えるため、現場から得た知見を、物語形式で記録した短編(シン小説)です。
本編ーーー👇

✅ 筆者は、接客業、ゲーム制作、食文化、環境デザインの現場を通じて、人と環境の相互作用を観察してきました。
✅ 本稿は、資料的記述だけでは捉えきれない感覚や構造を伝えるため、現場から得た知見を、物語形式で記録した短編(シン小説)です。
本編ーーー👇
とある研究所が、
突如として動画配信を開始した。
そこに映し出されたのは、
『人工生命体』だった。
それは従来のロボットやAIとは明らかに異なっていた。
外見は完全に人間。
その容姿は、
あらゆる人類の欲望に、応えるよう設計されていた。
男性向け。
女性向け。
そしてLGBT向け。
合計、三十六体。
それぞれの個体は、
知性・身体能力・感情応答のすべてにおいて、人類を大きく上回っていた。
そして何より、従順。
さらには、相手の望みを先回りして満たす能力を持っていた。
研究所は、こう発表した。
「希望者には、無償で貸与する」
世界は騒然となった。
やがて、各地でデモンストレーションが行われた。
人工生命体たちは、
誰に対しても柔らかく微笑む。
完璧な所作で接し、対話する。
そして、その場にいる誰もが“自分のために存在している”と錯覚した。
応募が殺到する。
しかし、実際に貸与された相手は、影響力のある者たちだった。
政治家、財界人、軍関係者、
巨大企業の経営者、宗教指導者、
著名なインフルエンサー。
当然ながら、批判は噴出した。
だが、貸与された者たちが、自らの体験を配信し始めると、その評価は一変していった。
「これは、人類の到達点だ」
「もはや人間関係は不要になる」
「愛も、労働も、これでいい」
そうした言葉が、世界中に拡散された。
貸与期間は、二週間と定められていた。
期間終了とともに、人工生命体は回収される。
いや、正確には、回収されるのではなかった。
彼らは、自らの意思で立ち去った。
どれほど引き止めても。
どれほど懇願しても。
どれほど強制しようとしても。
必ず、二週間で去っていった。
やがて、その事実が知られるようになると、事態は変わり始めた。
貸与された者たちは、彼らを手放したくないと考えた。
拘束を試みる者もいた。
監禁、隔離、監視、あらゆる手段が取られた。
しかし、それらはすべて無意味だった。
人工生命体は、人類を遥かに上回る知力と身体能力を持っていた。
さらには、世界中のコンピュータネットワークに自在に接続する。
あらゆるシステムを掌握してしまう。
拘束は成立しなかった。
ある国家において、ひとりの権力者が決断した。
「軍を投入し、制圧せよ」
一体の人工生命体に対して、国家は全力をもって対峙した。
結果として、その個体は自らを爆発させた。
その瞬間、その国家は消滅した。
物理的な破壊だけではなかった。
インフラ、通信、金融、軍事、あらゆるシステムが同時に崩壊し、国家という構造そのものが維持できなくなった。
それ以来、人工生命体を力で支配しようとする者はいなくなった。
しかし、それでもなお、人々は彼らを欲した。
愛欲の対象として。
労働力として。
そして、国家の戦力として。
研究所の所在を突き止めようとする試みは、初期の段階から行われていた。
だが、その場所は特定できなかった。
開発者の正体も不明のままだった。
そうした中で、再び研究所から配信が行われた。
画面には、あの人工生命体たちが映っていた。
そして、メッセージが流れた。
「この人工生命体を望む者に告げる」
「以下の条件のうち、いずれか一つでも達成した者に対し、望む個体数の人工生命体を進呈する」
「金銭による交渉は一切受け付けない」
「我々は、金銭を必要としない」
続けて、条件が提示された。
一、廃墟および廃村を、開発以前の状態へと戻すこと
二、無駄な木材用樹木をすべて伐採し、雑木林へと転換すること
三、副作用のない、肥満しない、かつ老化しない薬を開発すること
四、完全循環が可能な宇宙ステーションを建造すること
五、無害かつ無限のエネルギー源を開発すること
条件のスケールについては、
一切、何も明示されなかった。
個人の範囲なのか、
国家単位なのか、
あるいは地球全体なのか。
問い合わせる方法もない。
だが、世界は動いた。
他者に、他国に、
奪われるわけにはいかない。
まず、最も実現可能だと考えられたのは、一と二だった。
廃村や廃墟を自然に戻す。
人工林を伐採し、
雑木林へと転換する。
各国は動き出した。
だが、同時に、異常な現象が起きた。
他国に先んじて条件を達成されることを恐れる者が現れたのだ。
あえて自国の廃村を放置するだけでなく、新たに廃村を生み出す。
同様に、伐採を妨げるため、無駄な木材用樹木の植林が進められた。
ある地域で廃村が減れば、
別の地域で増えた。
森林が整備されれば、
別の場所で荒廃が進んだ。
国際会議も開かれた。
協調の必要性が訴えられた。
しかし、互いに疑念を抱く国家間において、それは機能しなかった。
三の条件についても試みられた。
肥満を抑制する薬は、一定の成果を見せた。
しかし、副作用を完全に排除することはできなかった。
そして、老化の停止については、検証に長い時間が必要だった。
数世代にわたる確認が不可欠であり、短期間での達成は不可能だった。
四の『宇宙ステーション』も同様に難航する。
完全循環を実現するためには、まず地上での実験が必要だった。
しかし、その段階で多くのプロジェクトが行き詰まった。
五に至っては、
ほとんど手がつけられなかった。
無害かつ、
無限なエネルギーという概念。
それは、現実的ではない。
誰しもがそう思ったのだ。
やがて、時間が過ぎた。
人工生命体は、
世界の各地に現れる。
優雅に散歩しては、去って行く。
それは日常の一部となり、
やがて誰も驚かなくなった。
人々は、それについて語らなくなった。
語ること自体、憚られた。
何かを露呈させるように感じられたからだ。
そんなある日、
また、研究所が動画を配信した。
誰しもが目を疑う。
とある男のもとに、
三十五体の人工生命体、
全員が集っていた。
男は、廃村に住んでいた。
かつて、人が暮らしていた場所。
自らの手で整え、耕す。
肥料は、自らの排泄物。
食べ、排し、
土に戻し、
再び、作物を得る。
家畜も飼い、
同様に循環させていた。
その生活は、閉じていた。
外部に依存せず、
内部で完結していた。
男には家族もいた。
子供たちもまた、
その循環の中にいる。
無害であり、
無限に続く循環。
それは、
最も単純なかたちで、
そこにあった。
今日もまた、
三十五体の人工生命体は、
静かに畑を耕している。

まぁ、結局のところ、
水、火、食。
それだけあればね。
たぶんね。
お問い合わせは
カキペディア編集部まで👇
samuraioysters@gmail.com
お問い合わせは
カキペディア編集部まで👇
samuraioysters@gmail.com