夕暮れ時のパリ。そもそも夏場のパリの夕暮れは遅い。そのカフェはこれからディナーに繰り出そうというパリジェンヌであふれかえっていた。そもそもパリジェンヌとかパリジャンとかいうのは本場フランスにおいてはちょっとした皮肉にもつかわれるようだが。
そんなカフェのカウンターで1人の女子、いや女史がエカイエに話しかけている。なんの話をしているのだろうか。その妙齢の淡麗な女史は、渡された生牡蠣をおもむろに口に注ぎ込み、手元のシャンパーニュをかぶせるように流し込んだ。
さらになにかしら談笑ののち、つぎに渡された牡蠣は、そのまま口には運ばず、バゲット、いやカンパーニュだろうか、にバターをたっぷりと塗り、そこに流しかける。流しかけるというのは、日本の牡蠣のようにプリプリと太った牡蠣ではなく、もっとみずみずしいシュッとした牡蠣で、流しかけるというのはふさわしく、海水がその皿にしたたり落ちたからだ。
それをまたおもむろに、そのシュッとした牡蠣とは相反するプルプルとした唇の割れ目に放り込む、間髪入れずにシャンパーニュも・・美しい顔が一瞬だが老婆かのようにゆがんだ。そして満面の笑み。そしてその女史は数枚のユーロ札をカウンターにおいて颯爽と去っていった。
バターが無塩な理由は、牡蠣をけして洗わないから。その点については後述もしますが、せっかくの海水=ソースが流れ落ちてしまうからです。
まず、パンにバターを塗り、そこに生牡蠣を海水ごと乗せて食べるか、牡蠣とそのバターパンを一緒に食べるかする。
で、ワインかシャンパーニュをそれが口にある間に流し込むわけです(これを口内調理というらしい)。
そうそもそも痩せてて海水なみなみだから、洗ってしまうとなんも残らんことも!この海水がこぼれないように、殻も厚くしっかりと、貝柱も太くしっかりとつくり、流通の過程でこぼれないようにしてたりもする。
どんな牡蠣が「ワインに合う」と行っているのかというと、ブロン(ブランド名ね)に代表されるヨーロッパヒラガキとよばれる品種。
いまフランスでは、1970年前後にこのヨーロッパヒラガキが牡蠣が死ぬ病気で絶滅してしまった(現在、他の地域から持ってきて一部復活)ために、その病気に唯一打ち勝てた日本種のマガキを養殖している。
そのマガキも「ブロン」を理想とするフランス人に向けて、できるだけ「シュッと(痩せ)」させて出荷するのだ。
日本は、どうしても夏の岩牡蠣(妊婦なでぶでぶ)を理想とした市場なので、このマガキも大きく太ってつくるのが上手な生産者が多い、というか、太らせないと売れないと思っている。
ためしに、痩せさせて出荷してほしいと頼んだら「なにいってんの?売れないものはつくらん」と。
それだとワインに合う牡蠣がないって整理になるので、パートナー生産者をフランスに連れて行って「 痩せさせる勇気」を学んでもらったり。
via.フランスはカンカル(ブルターニュ)の干潟養殖場にてフランスNo.2生産者と
話がそれた、、現在の日本において、こういった痩せた牡蠣を「意図的」に創れるのは僕のパートナー生産者だけだし、ちゃんと理解して出しているお店は弟子たちくらいではないだろうか。
そもそもワインに合う牡蠣が食べたいのであれば、ヨーロッパヒラガキがあればいいわけで。でもいまの日本の市場には諸事情あり出回っていない。
そこで、それに近い品種が有明海に・・
☞≪ 後篇に続く ≫
関連記事:
・早見年表|1960年代後半フランスのカキ絶滅の危機から現在まで
・日仏牡蠣交流に新たなる歴史の1ページ
・勝手に金<カネ>を産む「自然資産」
・世界かき紀行
・休日の昼下がり 牡蠣とシャンパーニュの会
・牡蠣ってこんなにいろんな品種がいるの・・?!
・クマモト・オイスターの謎
・あの数奇な牡蠣が史上初の全国出荷・・!
ver.2016-06-15
カキさら・・そう、皆さんにとってはただの一皿かもしれない。ただのランチであり夕飯かもしれない。でも創り手の角度からみたらどうだろう?そこに秘められた物語が、その一皿をさらに楽しく美味しくしてくれるかもしれませんよ。
夕暮れ時のパリ。そもそも夏場のパリの夕暮れは遅い。そのカフェはこれからディナーに繰り出そうというパリジェンヌであふれかえっていた。そもそもパリジェンヌとかパリジャンとかいうのは本場フランスにおいてはちょっとした皮肉にもつかわれるようだが。
そんなカフェのカウンターで1人の女子、いや女史がエカイエに話しかけている。なんの話をしているのだろうか。その妙齢の淡麗な女史は、渡された生牡蠣をおもむろに口に注ぎ込み、手元のシャンパーニュをかぶせるように流し込んだ。
さらになにかしら談笑ののち、つぎに渡された牡蠣は、そのまま口には運ばず、バゲット、いやカンパーニュだろうか、にバターをたっぷりと塗り、そこに流しかける。流しかけるというのは、日本の牡蠣のようにプリプリと太った牡蠣ではなく、もっとみずみずしいシュッとした牡蠣で、流しかけるというのはふさわしく、海水がその皿にしたたり落ちたからだ。
それをまたおもむろに、そのシュッとした牡蠣とは相反するプルプルとした唇の割れ目に放り込む、間髪入れずにシャンパーニュも・・美しい顔が一瞬だが老婆かのようにゆがんだ。そして満面の笑み。そしてその女史は数枚のユーロ札をカウンターにおいて颯爽と去っていった。
実はオイスター(殻付き生牡蠣)の本場フランスでの当たり前の食べ方
そもそもパリで牡蠣を頼むとパンとバター(無塩)がついてきます。バターが無塩な理由は、牡蠣をけして洗わないから。その点については後述もしますが、せっかくの海水=ソースが流れ落ちてしまうからです。
まず、パンにバターを塗り、そこに生牡蠣を海水ごと乗せて食べるか、牡蠣とそのバターパンを一緒に食べるかする。
で、ワインかシャンパーニュをそれが口にある間に流し込むわけです(これを口内調理というらしい)。
そもそも白ワインやシャンパーニュに合う!とフランス人が云っている牡蠣は、日本で好まれている太ったマガキや岩牡蠣ではない
太った牡蠣は「塩水に生クリームを入れたみたいで気持ち悪い」と。なので当然、生産出荷される牡蠣も、わざわざ日本でいうところの痩せて育てて出荷する(その方が育てやすく、その分安く市場に出せるというメリットも)。そうそもそも痩せてて海水なみなみだから、洗ってしまうとなんも残らんことも!この海水がこぼれないように、殻も厚くしっかりと、貝柱も太くしっかりとつくり、流通の過程でこぼれないようにしてたりもする。
どんな牡蠣が「ワインに合う」と行っているのかというと、ブロン(ブランド名ね)に代表されるヨーロッパヒラガキとよばれる品種。
この品種は、どうやってもあまり太らない上に、薄べったい形状をしており、そもそも身が入りにくい
牡蠣にはそもそも「牡蠣の味」「海(潮)の味」「クリーミー」な3つの味が一体になって成り立っているが、要は、牡蠣と海の味に特化した牡蠣というわけだ。いまフランスでは、1970年前後にこのヨーロッパヒラガキが牡蠣が死ぬ病気で絶滅してしまった(現在、他の地域から持ってきて一部復活)ために、その病気に唯一打ち勝てた日本種のマガキを養殖している。
そのマガキも「ブロン」を理想とするフランス人に向けて、できるだけ「シュッと(痩せ)」させて出荷するのだ。
日本は、どうしても夏の岩牡蠣(妊婦なでぶでぶ)を理想とした市場なので、このマガキも大きく太ってつくるのが上手な生産者が多い、というか、太らせないと売れないと思っている。
ためしに、痩せさせて出荷してほしいと頼んだら「なにいってんの?売れないものはつくらん」と。
それだとワインに合う牡蠣がないって整理になるので、パートナー生産者をフランスに連れて行って「 痩せさせる勇気」を学んでもらったり。
via.フランスはカンカル(ブルターニュ)の干潟養殖場にてフランスNo.2生産者と
話がそれた、、現在の日本において、こういった痩せた牡蠣を「意図的」に創れるのは僕のパートナー生産者だけだし、ちゃんと理解して出しているお店は弟子たちくらいではないだろうか。
そもそもワインに合う牡蠣が食べたいのであれば、ヨーロッパヒラガキがあればいいわけで。でもいまの日本の市場には諸事情あり出回っていない。
そこで、それに近い品種が有明海に・・
☞≪ 後篇に続く ≫
関連記事:
・早見年表|1960年代後半フランスのカキ絶滅の危機から現在まで
・日仏牡蠣交流に新たなる歴史の1ページ
・勝手に金<カネ>を産む「自然資産」
・世界かき紀行
・休日の昼下がり 牡蠣とシャンパーニュの会
・牡蠣ってこんなにいろんな品種がいるの・・?!
・クマモト・オイスターの謎
・あの数奇な牡蠣が史上初の全国出荷・・!
ver.2016-06-15